効率化したのに、なぜか忙しくなった。
余白が生まれると、人間は新しい仕事を作る。
「これで仕事が楽になる」
そう思ってAIを導入した。
3ヶ月後、仕事は増えていた。
議事録が増えた
会議の文字起こしをAIにやらせ始めた。
これまで誰も作っていなかった議事録が、毎回自動で生成されるようになった。
便利だと思った。
でも上司が言った。
「せっかく議事録があるんだから、全部の会議で回覧しよう」
- 確認する作業が増えた。
- フィードバックが来るようになった。
- 修正対応が、新しい仕事として生まれた。
AIが議事録を作る前は、誰も困っていなかった。
メールが丁寧になりすぎた
AIでメールの文章を作るようになった。
これまで3行で済んでいたメールが、丁寧で読みやすい5段落のメールになった。
受け取った相手も、AIで返信するようになった。
返信も、丁寧で読みやすい5段落になった。
メールの量は変わらないのに、一通あたりの文章量が3倍になった。
読む時間が、増えた。
資料の質への期待値が上がった
AIでプレゼン資料を作るようになった。
最初は「AIにしては上出来」と言われた。
3ヶ月後、それが「普通」になった。
- 「もっとデータを入れて」
- 「グラフをもう少し見やすく」
- 「競合分析も追加して」
要求水準が上がり続けた。
AIが使える前提で、求められるものが増えた。
楽になるどころか以前より高いレベルのアウトプットを、以前と同じ時間で出すことを求められるようになった。
なぜ仕事は増えるのか
これはAIの失敗じゃない。人間の本質の話だ。
効率化されると、余白が生まれる。
余白が生まれると、人間は新しい仕事を作る。
これはシリーズ1弾で書いたことと同じだ。
産業革命でも、PCが普及したときも、同じことが起きた。
AIも例外じゃない。
効率化=楽になる、ではない。
効率化=より多くを求められる、だ。
「見える化」が、仕事を増やす
もう一つ、AIが仕事を増やすメカニズムがある。
AIは、これまで見えなかったものを見えるようにする。
- 議事録がなかったから、決定事項が曖昧でよかった。
- データ分析がなかったから、感覚で判断できた。
- 報告書がなかったから、進捗が不透明でよかった。
AIがこれらを可視化した瞬間「なぜこうなっているのか」を説明する仕事が生まれる。
見えなかったから、問われなかった。
見えるようになったから、問われるようになった。
AIは仕事を増やしたんじゃない。
ずっとそこにあった問題を、浮き上がらせただけだ。
それは本当に「増えた」のか
ここで一度、立ち止まって考えたい。
仕事が増えたように見えて本当に増えたのか。
- 議事録の確認作業は、これまでも必要だったはずだ。
- メールを丁寧に書くことは、これまでもやるべきだったはずだ。
- 高いレベルの資料を作ることは、これまでも目指すべきだったはずだ。
AIが来て「仕事が増えた」と感じるとき
実は「これまでやれていなかったことが、やれるようになった」だけかもしれない。
増えたのではなく、本来あるべき仕事の姿に、近づいた。
それが正しいとすればAIで仕事が増えた話は、失敗談じゃなく、成長痛の話だ。